底地を賃貸するときの注意点

現在では、わざわざ新規に借地権を設定して土地を賃貸借することはないでしょう。
ただし、地主として借地権を買取する資金がないため、借地人が第三者へ借地権を売却することを承諾する際には次のような点に注意する必要があります。

(1)譲渡承諾料

借地権を第三者に譲渡する際は、地主の承諾が必要です
譲渡承諾料の授受を条件のひとつに加えて承諾することになります。
【事例】
計算根拠:更地  路線価255千円/㎡×0.92×400㎡≒90,000千円
     借地権 90,000千円×70%≒63,000千円
      よって、63,000千円×10%≒630万円
このように、きちんとした根拠を示すことが必要です。

(2)地代改定

借地権を第三者に譲渡する条件として、地代の改定を加えることも可能です。
ただし、あまりに高い地代へと改定することは公平の観点からオススメできません。
また、高い地代に改定することにより、借地権売買が成立しにくくなり、結局、譲渡承諾料さえ手にすることができなくなりますので注意が必要です。
【事例】
坪あたり720円の改定を条件とします
計算根拠:現行500円/坪ですが、固定資産税・都市計画税の3倍として計算
固定資産税・都市計画税(年額):350,000円×3倍÷12ケ月÷400㎡÷0.3025≒720円/坪
上記を参考として720円/坪とします。
]なお、セットバック部分を除外した有効敷地面積で計算します。

(3)買受先の審査

借地権の購入先候補及び計画案については事前に地主に通知し、新借地人として信頼できるか否かの判断を受けることを条件にします。

(4)測量関係

借地権売買にあたって測量が必要な場合は、その費用負担を取り決めます。
借地権を売却したいという借地人側の都合で測量することになるので測量費用は借地人側に全額負担してほしい、という気持ちは分からないでもないです。
しかし、将来相続が発生したときは測量しておくことで権利関係が明確になり、物納対象土地と認定されたり、売却がスムーズに進めることができるなど地主にとって恩恵をうけることも多くあります。
これらのことを考えると測量費は折半でも損はないと思います。
また、過去に測量を実施しているのであれば、借地権売買にあたって資料の写しを交付するなど協力をしてあげましょう。

(5)契約書

契約書は、トラブルを防止するため旧契約書をベースとして新規に締結しましょう。
新借地人との契約書の原案を作成して、事前に提示するとよいでしょう。
新借地人と事前に取り決める内容として例示をあげれば次の通りです。

①借地権利用の計画案(ラフ案)の提出


②建売業者などの場合は、会社案内(特に建売実績)、商業登記簿謄本など


③譲渡承諾料


 新借地人が不動産業者で建売用地としたり、アパート用地にする場合は、建築後にエンドユーザー(一般顧客)に再販売するケースがあります。再販する場合には再度、借地権譲渡の承諾をすることになります。あとあとのトラブルを防止するため、譲渡承諾料の取り決めを事前に通知しておく必要があります。
【事例】
 ○○様とのご契約後2年以内に再販する場合には譲渡承諾料はかからないものとします。但し、2年経過した場合は上記計算式に従い譲渡承諾料の支払を譲渡承諾の条件のひとつに加えます。

④再販先との契約書の原案

再販先との土地賃貸借契約書も事前に整備しておきましょう。公正証書で取り交すことを前提としておくこともよいかと思います。公正証書作成などの費用は通常は折半となるでしょう。

⑤住宅ローンの審査・同意

借地権購入者が住宅ローンを組む場合に、金融機関から地主に対して融資承諾を求めるのが一般的です。地主が銀行にだす承諾書についてはその内容を専門家にみてもらうことをおすすめします。
よく借地人から「銀行から融資を受けたいので、地主の承諾書にサインしてほしい」と求められることがあります。銀行には地主の承諾と実印、印鑑証明書まで求められてしまいます。承諾書の内容のなかに「借地契約を解除するときは、銀行の承諾が必要」との文言がはいっていれば、文言を変更してもらうか、他の銀行をあたってもらう可能性があることなども事前に伝えておいたほうがよいでしょう。

⑥建替承諾料


既存の建物を取り壊して新規に再建築する場合は、建替承諾料の取り決めをする必要があります。木造から木造への建て替えか、木造から鉄筋コンクリート(アパート等)への建て替えかによっても金額が違ってきますので注意が必要です。
通常、裁判所が非堅固建物所有目的から堅固建物所有目的に条件変更を許可する場合は、更地価格の10%と非常に高い承諾料の支払いを命じるようです。
【事例】
 現状の木造2階建から同様の木造2階建に建築する場合の建替承諾料は270万円とします。計算根拠:90,00千円 × 3%(3~5%)=270万円


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